サイトアイコン CAD日記

スケール

AutoCADにはスケールが存在しない。

こんな印象を持っている人は、近頃少なくなっただろうか。

私がCADを始めた頃、AutoCADはR12Jだった。

DOS版とWindows版があって、

何て使いにくいCADなんだろうと思ったものだ。

しかし、Release12Jというバージョンの付け方が

何とも言えないよい命名だと感じてはいた。

米国製のCADで、インチキくさい日本語のマニュアルは

ちっとも理解できなかった。

インチキくさいというのは言い過ぎかもしれないが、

意味がとりずらい直訳の言い回しは混乱したものだ。

自分の設計関連の知識不足ということも、もちろんあったけど。

でも当時から存在感は圧倒的で、いつか使いこなせたら、

という淡い希望を抱いていた。

使いにくい=プロが使うもの、という妙な思い込みもあった。

さて、スケール。

AutoCADでは、尺度と呼ぶ。

レイヤを画層と呼ぶように、AutoCADは妙に古風な日本語を使う。

そして、カレントレイヤのことを、現在の画層と呼ぶ。

「現在の」という表現は意味は分かるが、ダイレクトすぎて違和感を感じる。

あと、ブロックのことを昔は複合図形と呼んでいた。

近頃はあまり聞かなくなったが、R12Jのころはそう呼ばれていたはず。

AutoCADは実寸で図形を書いて、印刷時に縮小する。

つまり図面を描いている段階ではスケールなど考えない。

一方、非AutoCADはレイヤなどにスケールを設定して、そこに図形を書く。

図面を描く段階でスケールを強く意識することになる。

よって用紙サイズという考え方も図面に埋め込むことになり、

印刷するときは何も考える必要がない。

この違いは、当時の自分を大きく混乱させた。

AutoCADにはスケールがない。

こんな考え方に一定の自信があり、エンドユーザーと直接話す機会がある

フェアーなどで力強く発言していた。

そんなとき、ある客に言われた。

AutoCADにはスケールがあるよ。

矩形内に図形を小さくしたり大きくしたりして、表示することができるよ、と。

何のことかわからなかったし、客も自信なさげに話していたので、

いや~、そういったものはAutoCADにはないはずですよ~、と回答した。

ペーパー空間(近頃はレイアウトと呼ぶ)との出会いだった。

モデル空間に描いた図形を、ペーパー空間にビューポートという矩形の

窓のようなものを配置して、図形の表示倍率を設定する。

こんな事実を知ったのは、少し後のことだった。

たしか、R13J くらいからか、

ペーパー空間という機能が実装されたのは。

1つの図面に1つのペーパー空間しか存在できなくて、

ビューポートは矩形しか使えなかったはず。

ペーパー空間機能は、その後のバージョンアップで進化を重ねて

現在の2008では、そこそこ使いやすくなったし、

レイアウトという名前になって知名度も上がってきた。

ところが、AutoCAD以外ではこのレイアウトという機能がほとんど存在しないため、

他CADとのデータ交換で問題となるのは、今も昔も変わっていない。

AutoCADユーザーの中でも、そのわかりにくさからレイアウト機能は使わないという人は多い。

先ごろリリースした2008では、異尺度図形なるものが登場した。

文字、寸法、ブロック、ハッチングなどの図形に尺度を持たせることができる。

異なる尺度を持つビューポートにおいて、同じ大きさの図形として表示することができるらしい。

まだ調査不足でよく理解していないが、どうもきな臭いものを感じる。

さらに混沌とした世界に突入したような印象が強い。

AutoCADの行く末が心配だ。

自分の心配をしたほうがいいかもしれないが。

2008でもう1つ気になっているのが、マルチ引出線。

マルチ引出線スタイルなんていうものまである。

マルチテキスト、マルチラインに続いて、マルチ引出線か。

私の経験則では、マルチと名前の付くものに碌なものはない。

偏見が過ぎるか。

マルチ引出線は、ブロックのデータ構造を拡張しているようだ。

2008は、2007と同じデータ構造なので新しいエンティティーが

追加されることはない。(仮に追加されたとしたら、MLEADERとなったか)

異尺度図形も同様。

図形をブロックで包むことによって、データを拡張している。

新しい形のデータ拡張方法だ。

しかし、これではAutoCAD内での下位互換で問題になるのは必至だ。

もちろん、他CADとのデータ交換ではもっと大変なことになる。

うんざりしてきた。

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