旅先の空の下、吉川英治による宮本武蔵、全8巻を読了した。
マンガ・バガボンドによる不完全燃焼がきっかけだった。
いやはやおもしろかった。
剣の道に生きる武蔵。
小次郎、吉岡家をはじめとした強敵だけでなく、
お通、朱美、城太郎、伊織といった女、子供を
中心に据えているあたり、大衆受けするポイントとなっている。
また、徳川将軍家、豊臣家、柳生家、細川家など、戦国後期の
混乱を描いているあたりも興味深い。
お杉婆の執念は、すさまじかった。
武蔵とお通にたいする飽くなき憎しみ。
よかれと思って行動することが、ことごどく裏目に出て、
憎しみを倍増させる。
最後の最後に、お通の気持ちが届き、誤解が解ける。
そして、お杉の息子、又八。
だらしなくて、女たらしで、見栄っ張り。
武蔵に強烈なライバル心を持つも、何もできない男。
人をだまし、だまされ、生きていく。
最後の最後に改心して、朱美といっしょにけなげに生きていく。
お通の恋はどうなるのだろうか。
はかない美しさを持つお通には、誰しも感情移入する。
武蔵もお通への愛情を持っているが、剣の道に生きることを
優先した結果、お通との接点は非常に少ない。
少ないだけに密度の高い関係性を築く。
小次郎との決戦に向かう前、武蔵とお通のやりとりがある。
「最後に私を妻と呼んでください。」
「我が女房よ。」と武蔵はお通に声掛ける。
恋は実ったと言えるだろう。
武蔵は小次郎に打ち勝つも、物語ではその後の武蔵とお通のことに
関して触れられることはない。
剣の道に生きながらも、二人が幸せに暮らしたと信じる。
さて、今日は金曜日。
旅も終盤を迎え、明日の夜には帰国する。
今日が終日を過ごせる最後の1日となる。
帰った後の仕事のことなど一切考えずに、時を過ごそうと思う。