2次元CADを入れ替えたいからとウチのCADを提案するという話が来て、入れ替え元のCADがCANDYだった。おいらがCADに関わりはじめたのが1994年なのに対して、CANDYは1983年リリースのCAD。世界初のパソコン用CADだったとさ。値段は4万円と格安。ウチのCADが100万円超だったのに対して、先行してリリースされていたCADが4万円だったとは。。
アスキーから発売されて、サムシンググッド⇒アイフォーと渡り歩いて今はもうない。CANDY8(8.01が最終版)がWindows XPで何とか動いていたらしく、Windows 7のXPモードでがんばって動かしている人がまだいるみたい。Windows 10でも互換モードにすればまだ動くんじゃないかと思われるが現物を入手することはもう無理。オークションで出ていた形跡があるも、もう需要がないから残骸が残っているだけ。
そんなCANDYで作った資産(CAD図面)が届いて、ウチのCADに移行したいってことだった。拡張子C8で、中身はもちろんバイナリー。バイナリエディタを駆使すれば構造を解析できるかもと一瞬思ったが、現物もなくそんなことはできんぞと断念。いっしょにDXFがついていたから中身を見たら、線と円弧と文字しかなかった。文字は1文字ずつに分解されていた。座標系が妙で、ミリ単位ではなくマイクロミリ単位。値が整数で1000で割ればミリになるということ。Y座標がぶっとんでいて、1,000,000mm(=1km)足し込まれている。1kmの範囲内に図形を書ける仕様の関係で、その上限付近に図面を描くのだろう。なので、Y座標は9,999,000mm分引けばいいのかな。それとも100万ミリから実際の値を引いた上で、上下方向に反転すればいいのか。なんともわかりずらい座標系であり、こんな背景もあってバイナリ解析する気持ちが減少したのだった。
CANDYでまっさきにヒットするのは以下の記事。
学生時代にソフトで3億円稼いだ話
中嶋聡氏は1960年生まれだからおいらよりも10歳上。20世紀にアスキー、NTT、マイクロソフトと社歴を重ねて、アメリカで起業している。先見の明があるIT技術者なのは間違いなく、大学時代にアスキーでバイトしていてCANDYを作って3億円ゲットした。そのままCADを続けるなんてことはせずに、Windows 95や98、IEなんかの開発に関わり、日本ではレジェンドの人みたい。まだ63歳だから現役で新技術に取り組んでいるのだろう。AI関係の著書を出しているみたいなので読んでみよう。
アスキーといえば、マイクロソフトの前身であり週間アスキーなんかの出版事業が中心の会社だった。アスキーサムシンググッドがソフトウェア開発寄りの企業で、アイフォーはAI将棋や筆王で有名。オーロラエースもか。イーフロンティアが引き継いでしばらく続けていたが2022年に廃業してピアズ社になっている。アイフォーまではCANDYの歴史であり、その系統のCADをどこも引き継いでいない。ユーザーはそこそこ残っているがみんな歳を取ってしまい、新しいCADに乗り換えるなんてメンドウなことはせずにひっそりと仕事を引退するのだろう。はじまりがあれば終わりがある。おいらだって、CAD老人会の一員なので引退に向けて身辺整理しておかないといけない。あんまり仕事を広げずにジワジワと終息させるのが吉なり。